それはアメリカでの新しい職場に移って数週間後だった。
それは2001年9月11日だった。

以来アメリカ国旗が街中に溢れ出した。ショウウィンドウや車のアンテナから人々のTシャツにまで。テレビでは様々な肌の色の老若男女がそれぞれのお国訛りの英語で「私はアメリカ人です」というコマーシャルが流れていた。

自分は人生の約3分の１をアメリカで過ごした。コマーシャルに出ていた殆どの人達よりはおそらく長い（であろう）期間をその地で過ごした事になる。だが、「私はアメリカ人です」とは言い切ることはできなかった。

そのアメリカ本土のみではなく、母国、日本でも同じように店や一般の人々がアメリカ国旗を纏うのを以前にもまして見るようになった。

国旗という布に染められたシンボルや、国境という紙の上に引かれた線を思い、写 真を撮りつつ自分がどんな地に足を付けているのかというのを考えてみた。