私は、今までに様々な国を旅し、写真を撮り、展示してきた。 自分のものとは異なる文化や人々をみるということは 自分の(あなたの)文化を見つめ直すことに大いに役立つ、と私は考える。 私は多くの違った場所を訪れることによって、人間という共通の存在に気が付いた。 訪れた土地でエキゾティックな風景や人々を見て過ごすだけでなく、旅をしている間じゅう、自分の人生やアイデンティティについて考えを巡らす事が度々ある。 私は自分に問い続ける; 自分は何処からやってきたのだろうか? そして、これから何処に向かおうとしているのだろうか?そう問い続けるうちに、 私の中にある「基準」というものが崩れはじめる。 その「基準」とは、時間や距離、空間などの尺度である。

それらが崩れ落ちてなくなった後、自分のなかに残るものは「無」である。「無」とは禅の精神の土台を成すものである。 旅を続ければ続けるほど、「無」の視点から全ての物事を見ることが出来るようになってくる。しかし、先程の問いへの答えはまだ出てきていない。 なぜならば、自分はまだ旅の路上の途中に在るからである。

旅は人生の縮図である。

私がここに展示した写真は、旅の途中に遭遇した情景の一部である。 これらは私のフォト・スケッチブックからの抜粋である。

1997年 春

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